東京地方裁判所 昭和43年(ワ)13405号 判決 1969年6月30日
原告 破産者東京スポーツマン株式会社破産管財人松本光
被告 厚川株式会社
右訴訟代理人弁護士 堀岩夫
主文
被告は原告に対し、金一、〇〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四三年一一月二三日から支払ずみにいたるまで年六分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
本判決は仮に執行できる。
事実
<全部省略>
理由
東京スポーツマン株式会社が原告主張の日に東京地方裁判所から破産の宣告を受け、原告がその破産管財人に選任されたこと、被告が破産会社に対し、昭和四二年一〇月二六日現在で金二、九二三、七一二円の売掛金債権を持っていて、その支払確保のため、破産会社振出、支払期日昭和四三年一〇月五日、額面二、九二三、七一二円の約束手形を受け取っていたこと、昭和四二年一二月三〇日、被告と破産会社のあいだで、破産会社が右売掛金債権の内金一、〇〇〇、〇〇〇円を支払えば、被告は残債務を免除するという約束ができたこと、および、(だれから受け取ったかはべつとして)被告が訴外株式会社塩野商店振出、支払期日昭和四三年三月三一日、額面一、〇〇〇、〇〇〇円の約束手形を受け取り、期日に右の約束手形金の支払を受けたことは、当事者間に争いがない。
そして、<証拠>を綜合するとつぎの事実が認められる。
訴外株式会社塩野商店は、当時破産会社の在庫品をあずかり保管していたところ、破産会社と被告の話し合いで右の在庫品の売却代金の内金一、〇〇〇、〇〇〇円を、破産会社の被告に対する前記買掛金債務の弁済にあてることになったので、その支払方法として、右訴外会社が振出人となって、破産会社を受取人とする支払期日昭和四三年三月三一日、額面金一、〇〇〇、〇〇〇円の約束手形(甲第三号証)を、破産会社の前記在庫品の売却代金を資金として振出し、破産会社はこれを訴外株式会社井上商店に裏書譲渡し、同訴外会社はさらにこれを被告に裏書譲渡し、被告はこれを支払期日に支払場所に呈示して、右約束手形金一、〇〇〇、〇〇〇円の支払いを受けたことが認められる。したがって、右の約束手形金は、結局、破産会社の在庫品の売却代金のなかから支払われたものである。
被告は、訴外株式会社井上商店から「第三者弁済として」右の約束手形の裏書譲渡を受けたと主張し、証人成瀬由則もその主張にそうような証言をしているが右の経過と<証拠>に照らすと、そのようには認められない。右の訴外株式会社井上商店は、被告の主張するように「第三者弁済」をしたのでなく、支払保証の意味で右の約束手形に裏書したにすぎないものと認められる。そして、右の約束手形金が被告に支払われた当時すでに破産会社が支払いを停止していたことは、弁論の全趣旨によりあきらかであるから、右の支払いは、破産法第七二条第四号に該当し、否認権の対象となる。
したがって、右の支払金一、〇〇〇、〇〇〇円の返還およびこれに対する本件訴状送達の翌日である昭和四三年一一月二三日から支払いずみにいたるまで商法所定の年六分の割合による遅延損害金の支払いをもとめる原告の本訴請求は全部正当であるからこれを認容する。
<以下省略>。
(裁判官 渡辺均)